車谷長吉『赤目四十八瀧心中未遂』

京都にいたころとそのあと数年間、折口信夫と川端康成と並んで、この『赤目四十八瀧心中未遂』を繰り返し読んでいた。この三人は関係がある、というか、車谷長吉は二人を愛読していたと思う。三人とも関西の出身で、仏界というより魔界のそばに暮らしているひとたちだろう。さかのぼってみれば、芭蕉、兼好、源氏につらなる魔界の系譜が浮かびかがってくる。

思い返すとそのころ嫉妬に憑りつかれていたけど、この本でだいぶ救われた気がする。

嫉妬はおそろしく、嘘や虚栄のように罪ではないが、自分を苦しめるという点でこれ以上のものはない。

原因はむろん「執着」なので、執着を捨てれば楽になる。でも、それほど強い執着というのは、たいていの場合、生きるために不可欠なものへの渇望とほとんど同じだから、そう簡単には捨てられない。一見どうでもいい執着を捨てるために、世の中を捨てる気概で望まないと難しい。

そんなふうにして私も何度か、目をつぶって断崖から飛び降りてしまったことがある。それで楽になったから後悔していないけど、本当はそこまで追い詰められる前に自分を立て直さないといけない。

主人公の生島は、慶應独文卒の広告取りからどんどん落ちぶれ、いまは尼崎のアパートでホルモンの串刺しをして暮らしている。彼はすぐに、同じアパートで初老の刺青師に囲われているアヤちゃんに恋してしまう。そうこうするうちにアヤちゃんのお兄さんが、所属する暴力団相手に使い込みをして、そのかたにアヤちゃんを福岡のソープに売ってしまう。それで生島とアヤちゃんが心中することになって、伊賀の赤目へ行くというようなあらすじだった。

疲れてしまったので続きは次の記事に。

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