織物の夢

爆撃のあとのように大きな穴がたくさんあいた道を、スクーター風の乗り物で急いでいる。前に2台、とてものんびりした車が走り、私が運転に慣れていないためにすぐに車間距離が短くなってしまうのを、不安に感じている。思い切って抜かそうと思うけれど、切羽詰まった気持ちなので、対向車がいるのに気が付かずに対向車線に入り、あわてて戻り反省し、のろのろと走り続ける。そのうち新幹線の停車する大きな駅の裏につき、構内へと急ぐ。

暗い裏道から駅へ入る車寄せのあたりに、大きなアシカかオットセイかトドのような海獣が横たわっている。一匹ではなくて、何匹か、ロータリー状になっている車道から歩道へ、アスファルトが一段高くなっているその段差に身を預けるようにして、互いに距離を置いてじっとしていた。そのそばにさかんに写真をとっている人込みがある。カメラの向く先をみると小さなかわいい子供が二人、ポーズをとっていた。私は海獣を撮っておきたいと思って電話を取り出してカメラを向けるが、そこへ子供の一人が入り込んできて、どうしても海獣が陰になってしまう。なんとか海獣の全身を撮りたいと横にずれたり、カメラを高く掲げたりしていると、子供の母親らしき女性がやってきて、わざわざ子供を私の正面に押しやってくれた。本当はあなたの子供ではなくて海獣が撮りたいのだと告げるのが何か憚られて、私はその女性と少し話をする。

話をしているうちに、その女性が何かに追い詰められている様子が伝わってくる。彼女の手元に綺麗な製本の冊子があり、表紙をみるとカラフルな織物の本だった。これから実家へ帰るのだが、子供がふたりともクモなので、織物にして持っていくしかない、と泣いている。私は驚いて、あんなに綺麗なクモなのだから、ふたりともクモとして連れて帰ればいいのではないか、幸せに生きていける、などと話している。

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